少女はスカートのしたで鯨を游がせる。 第2話
高校に入った私は、転がり落ちるように坂田銀子だけの世界にのめり込んだ。 もともと剣道の仲間が誰もいない高校だった。私は新しく友達を作れる性格でもないので、必然的に銀子とばかりいるようになった。 前よりもずっと。離れたくないというように。 入学式が終わったその日も、式に参加したおじさんには先に帰ってもらい、私は銀子の家に遊びに行っていた。 銀子の家は忙しいらしく誰もいなかった。入学式のあとすぐに仕事に戻ってしまったらしい。それがこの家の普通だ、と彼女は言っていた。 私は、はじめて人前で脱いだ。語弊がある。修学旅行や剣道の合宿で大浴場に入る際、私は確かに人の前で脱いだのだから、本当は脱いだことがあった。 しかしそれとこれとはまったく別の話だ。 2階にある銀子の部屋について行った。 ベッドとタンス、机と本棚が置いてあった。多嗜好でおしゃれ好きな彼女にしては、簡素で普通の部屋だった。 その部屋で私は銀子に言われた通り、Tシャツとズボンを脱ぎ、ブラジャーとパンツのみの姿になった。 見栄を張って小さなブラジャーを買ったせいで、おっぱいがはみ出しそうなほどギュウギュウに詰まって、苦しかった。……こんなことになるならEカップを買うべきだった。コンプレックスだからといって無茶はしてはダメだ。私は後悔する。 するとこちらも服を脱いだ銀子が、私の方を向いて目を丸くした。 視線は、確実におっぱいをとらえている。 「───トシ子ってほんと、おっぱい大きいよねぇ」 「っ!!……ぅ、うるせえ」 「恥ずかしがらなくていーよ。私は好きなサイズだよ?トシ子のおっぱい、ねえもっと見てい?」 「っ、」 いつも触るときは許可なんかとらない銀子が、珍しく許可を求めてきた。そんなことをされたら甘い私は断れない。 ……本当はブラジャー姿なんて恥ずかしくて人に見せたくない。というか、いろいろ間違っている気がする。けど。 (銀子は慣れてるから……大丈夫) 百戦錬磨の彼女なら、私のコンプレックスを知っても、『そーゆー子いるいる』と適当に流してくれそうな気がした。 それに私と銀子は今まで膝枕をしてたくさん遊んだ。 そのときには、銀子が私の服の上からおっぱいを触るなんていつものことだったし、今さらブラジャー姿を見るぐらい、どうってことない気がした。 「……いい」 私が短く伝える。 銀子は自らの形の良いおっぱいを揺らしながら私のもとまで来て、となりに立ったままずっと、私のおっぱいを見ていた。彼女の視線は釘付け。 とくに乳頭に熱い視線を感じた。 「……っ」 触られていない。見られているだけ。 なのに銀子の目があまりにも真剣に、ブラジャーを押し上げる私の乳頭を観察するものだから、だんだん息が上がってきた。 (おか、しい…………見られてるだけなのに) 穴のなかがズクンと重くなる感じがする。おかしい、いつもなら触られたり何か言われたりして……はじめてこの感覚に陥るのに…。今はまだ見られているだけなのに。 「トシ子」 「っ!!な、に……?」 私は驚いて言葉が詰まる。 「ありがとぉ。あんまりにも大きいから、見とれてたぁ~」 銀子はそう言ってリビングに行こうと言い出した。 「ぇ、」 待って。いくら誰もいないとは言え、まさかこの格好で行くわけじゃないよな……? 今の私たちの姿は下着だ。ブラジャーとパンツは身に付けているが、あとは素肌のまま。こんな姿を帰ってきた銀子の家族に見られたら───大変なことになる。 「だいじょーぶだってぇ、今日は誰も帰ってこないし~お兄ちゃんも彼女のとこ、泊まるしぃ」 「お、お兄ちゃん……?」 「あれ言ってなかったー? まあそれより、トシ子おいで」 「────ぁ」 私は手を引かれるまま、部屋を飛び出すことになった。何事もないように歩いていく下着だけの銀子の後ろ姿は、怖いぐらいに格好いい。 私は胸が熱くなっていくのを感じた。 「トシ子ぉ~リビングのソファー、まじで座り心地いいから。おすすめ」 「ぁ、ああ……」 彼女の生白い指が私の指を絡めたまま、階段に誘われた。段差をひとつおりる度に、彼女の胸は揺れる。ひとつ上から見ていた私は、その事で気が気じゃない。 それより私もおりないと、と急いでついておりる。ブラジャーを揺らして私のおっぱいは、ぶるんっと揺れる。肩まで響く大きな振動だった。乳首まで振り回すような激しさに、私は変な話……イケないことをしている自覚をしてしまい、膝が震えた。 そのまま私は銀子の家のリビングにあるふかふかのソファーに座らされ、いつものようにおっぱいを触られた。 いや、いつもは服の上だ。いくら薄手の服とはいえ、やっぱりブラジャーの上からとは全然違う。──自分で触るのとも全然違う。 私は乳首をすぐに硬くしてしまい、銀子にクスッと笑われてしまった。 恥ずかしくって情けなくって、涙が出そうだった。 けれど…。 「としこぉ、かわいー」 そう言われたら、全部がどうでも良くなった。 それから銀子の家に行くときは、いつも服を脱ぐようになった。 それだけじゃない。私の家に来てもらうときも……放課後に空き教室にいるときも……誰もいない時間を見計らっては、下着姿になって二人で見つめあっていた。 あとはブラジャーの上からおっぱいに触るだけ。 格好のわりに、いたって健全なことをしていた、自覚がある。 銀子はその日によって、キスマークをつけているときもあれば、ないときもある。 一度本人に確認してみたら、「相手が勝手につけるから放ってる」とのことだった。 私は「ふーん」と相槌を打つだけだ。別に嫉妬はしなかった。まず銀子がモテることに嫉妬をしても仕方がない。私より銀子の方が魅力的なのは、この一年でよく知っている。 日頃の彼女はだらしがなく、人に『放っておけない』と思わせるようなフェロモンのようなものを出しているように見える。でも一度スイッチが入ると、それこそ母性を放ちはじめて、何よりも優しい微笑み方をするのだ。 私はその瞬間が、震えるほど好きだ。近寄ることの許されないような神聖な場所に、選ばれて手を引かれるような感覚になれるのだから。 私はとどのつまり銀子に心を奪われていたのだろうか? 彼女に頼まれたことはもう、断れなくなっていた。 トイレについて行くなんて当たり前だし、何をされるかわかっていても銀子の家に誘われたらついて行ってしまった。 おそらく銀子が私に、 「キスして」 と言ったら、その通りにする自信があった。 嫌悪感はない。 …………背徳感とすこしの好奇心が入り交じりながら、唇を差し出しただろう。 銀子の家に行くようになってから、一年が過ぎた。 高校二回目の夏がやってこようとした。 その頃になると銀子の部屋もクーラーをいれ始め、部屋のドアを締め切るようになった。カーテンを閉めていても変に思われない、そんな異様な季節に。 銀子は「ブラジャー脱いで」と言うようになった。少しずつ要求が過激になっているような気がしたが……断れなかった。 もう発達することはないから大きくならない私のおっぱいは、それでもEカップはあるので、ボリュームがある。ブラジャーをとっても乳首が上をツーンと向くので、私はあまり裸になるのが好きじゃなかった。 (でも銀子が、待ってる……) そう思うとどうにかしないと、と胸が熱くなるのだ。それに彼女は、 「パンツは脱がなくていいから」 と譲歩したのだから、私に逃げ道はなかった。 銀子はやはり私のおっぱいを直接見ても触らずに、ただずっと観察し続けるのが、好きらしい。 何度もそんなことをするので、「何が楽しいんだ?」と聞いたことがある。 おっぱいの形。乳首の形。乳首の立ち方。 乳頭の先っぽはどうなってる?あと乳首の色は? 全部知りたくなるの。──そう言っていた。 私は背筋が痺れるほど興奮したのは、いうまでもない。 表面上は、「っ、!変態か!!」と真っ赤になりながら罵倒したが、それでも心のなかでは、心臓がばくばくして仕方がなかった。まるで犯されているような感覚に陥った。 (……まさか今まで銀子が、そんなことを思っていたなんて) 一層ブラジャーを脱ぐのが恥ずかしくなった。でも、嫌じゃなかった。 銀子は、たまに変なことを聞くようになった。 高校二年生の秋のことだ。 最近の友だちはそんな話をするのか、と本気で疑問に思うが銀子の性格からすると、彼氏だけじゃなく友だちにも聞くだろうと思えた。 テスト間近で半日授業だった日のことだ。銀子は私に、ぼーっとしたままたずねた。 まるで世間話をするように。 「トシ子はさぁ~右乳首と左乳首、どっちが敏感?」 「──は?」 いつものように裸で(パンツのみ穿いてる)銀子の家のソファーに座り、テレビを見ていた。 私がチャンネルをさわり、パッと昼ドラをかけたときだった。画面のなかで男女が布団を手繰り寄せ、まぐわっている光景が撮し出された。 『は、ぁ………ん』 女の掠れる声がするのが生々しい。 ひとりでいても、ドラマでキスシーンを見るとチャンネルを変えてしまう私だ。 なんとなく気まずくなってチャンネルを変えようとしたとき、銀子が、 「どっちの乳首が敏感?」 と聞いたのだ。 横目で右の方を見ると、銀子が私の方に身体を向けているのが分かる。こぶりながらも色の濃い、成熟した女の色をした乳首をこちらに向けて。 私は困った。 これは冗談で聞かれているのだろうか? それとも、テレビを見てなんとなくで聞いたのか? どちらにしても、恥ずかしいないようであることに間違いはなかった。 「そんなの……知るわけ……」 「もったいないよ?」 「へ?」 「だって~セッ○スするときに乳首でイけた方が、ぜっったい気持ちいーもん」 「せ……っ!?」 「私は右乳首かなぁ~。あんまり感じないけど、イけないことはないし」 「………っ」 脳裏に喘ぎ声をあげる銀子が浮かんだ。押し倒された銀子は、美しい髪をシーツに押しつけてどんな表情でイくんだろうか──私は唾をのみこんだ。 「トシ子?」 名前を呼ばれる。 「っ、ぁ……なに!?」 「いやぼーっとしてたから。で、私が確かめたげよっか?」 「へ?」 銀子の話を聞いていなかった。 私が首をかしげてもう一度話してほしいと伝えると、銀子は「だーかーら」とムスッとしながら教えてくれた。 「乳首、どっちが敏感か確かめたげる♡」 そう言うと銀子は、あたしの背中に回り込んだ。 ソファーと背中の間の狭いところに銀子が入る。あまりにも近すぎるため、銀子の柔らかいおっぱいが私の背中にしっとりとくっつく。 「ッ!!」 背中に感じる温かな体温。息を飲んで固まっていると、彼女の心臓の音が聞こえてくるようだ。 するりと後ろから指が伸びてきて、私の左乳首がとらえられる。 「っ、な……!」 「まずは左ね?」 銀子はそういうなり躊躇いなく、人差し指と親指で乳首を摘まんだ。 「…っ」 強くも優しくもないちょうどよい塩梅だった。まったく痛くない。 驚いたわりに痛みもないので、私は調子に乗って言った。 「だいじょう、ぶ……どうも、ない」 「ふふ。大丈夫ってなによぉ~気持ちいくない? ヒリヒリとか、ビリビリしない?」 「ん………違和感あるけど、だいじょ、ぶ」 「ふーん違和感ねぇ……──感度いいんだ」 「ンん…なんか、言った、か?」 「なぁーんも」 そう言って銀子は左手の力を抜いた。 ふう、と私も息を抜く。良かった。このぶんなら銀子の前でイくことはなさそうだ。 背徳感からパンツの陰部部分はヌルヌルに濡れているけど、ばれなかったら、いい。 「つぎ右ね~?」 「……ああ」 「ちなみにどっちも気持ちよくなかったら、私が開発してあげるからね♡」 「────っ!」 その台詞に下腹部辺りがジーンと熱くなる。 (銀子に乳首を弄られるだなんて、そんな変態なこと) 少し想像してみようとしてやめる。 ダメだ、そんなことされたら私が変態だと気づかれる。今でもこんなに穴が濡れているのに、刺激なんかされた日にはパンツをはいていられない。 こうなったら……少しだけ感じてるフリをしよう。 テレビみたいに喘ぎ声を出したらいいか。わざとらしくない程度に、『あん』とでも言ったら……。 いや、わざとらしいか。 (てか感じるってどんなんなんだ───どうなったら正解なんだ) そうこう悩んでいるうちに、銀子の指が右脇腹から伸びてくる。 「いくよ?」 「ちょ、」 待ってくれ、まだ考えてない……! そのときだ。 グリッ 「ひぁ!」 息を飲むようにして甲高い声が上がった。乳首が痺れたように、痛い。一体誰の声───と驚いている間にも、乳首はビリビリと痛みからか張り始めた。 「ぎ、ぎんこぉ…………いた…い…、」 止めてほしくて、声をかける。 でも彼女は、私の様子がいつもと違うことに気づいたのか、指を離してくれない。それどころか乳頭をクリクリと指の腹で撫ではじめた。 「っ、ぁ、!ひ──っ、ゃ!」 敏感な神経をそのままごりごりと潰されているような感覚に、喘ぎ声が止まらない。口の端からは唾液が溢れ、身体が震えてきた。 「ゃ、やら、ぎんこ…………ッ、ゃ、ぁ──!!」 背中が勝手に反れて、私はおっぱいを突き出すような姿になる。さっきから銀子は私の背中で、無言のまま乳頭をこりこり虐めてくる。敏感な中心を指の腹で押されるたびに、身体が震え、私は怖くなった。 思わず前に逃げようとして、置いてあったローテーブルにしがみつこうと手を伸ばした。すると。 「逃げちゃダメ」 「ひぃ!っ、ぁ!ぐり、ぐ、り、しちゃ、ぁ、」 「────トシ子」 「ぅ、あ……?」 おっぱいをローテーブルにつけるほど前屈みになって、銀子の指から逃げようとしていた。すると彼女も一緒に前屈みになって、耳元に唇を寄せてきた。 「トシ子って乳首、弱いんだ」 「っ、ぁ、あ、ちが、」 弱いなんて認めたくなくて耳を塞ごうと両手をあげた。そのとき。無防備になった乳首を、両方とも搾りあげられた。 グリグリグリグリグリグリグリグリ 「んひぃい───っ♡♡」 目玉が上を剥いて、悲鳴のような声を上げてしまった。腰が揺れて止まらない。膝の力が抜けてローテーブルにしがみつくことで精一杯だった。 背中を反ってお尻は後ろに突き出し、見事な雌の受精ポーズになっていたのだが、私はそんなことわからない。 後ろで私のお尻に腰をぶつけてくる銀子が、疑似セッ○ス紛いなことをしていただなんて、軽くイっていた私は知らないことだった。 ただ、 (きもち……………ぃ…) の言葉が脳内を染めていた。 それからは銀子との秘密の遊びのなかに、乳首を育てることが入った。 私だけだと不平等だ、と怒った私の意見から、銀子のおっぱいを私が育てることもあった。しかし割合的に確実に、銀子が私の乳首を育てる方が多かった。 おかげさまで今じゃ、右乳首どころか、左乳首まで弄られるとじんじんするようになった。毎回のようにイっちゃうし……これは友達に見せる姿じゃないんじゃないか、そう不安になる。 でも銀子は教えてくれた。 「みんなしてるよ。みーんな」 そっか、やっぱりみんなしてるんだ……。 私たちだけじゃない。そのことは私を安心させた。 でもその反面、少し羨ましいと思ってしまった。 (───こんな神聖なときの坂田銀子を見れる人が、私以外にもたくさんいるんだ) ずるいと思った。 私にはもうこの高校に、銀子以外にいれる子がいないのに……銀子は外にたくさんの友達がいる。そしてその友達は高校の生徒とは違って、みんな銀子に特別扱いされてるんだ。じゃないと、『おっぱいを育てる遊びを、みんなしてる』なんか知らないはず。 (これは嫉妬か……?) 胸がモヤモヤとして気持ちが悪くなった。 今まで誰かに組み敷かれる銀子を想像すると、ドキドキしたのに。今はもう、そんなことを考えたくなかった。……私以外に、触れてほしくなかった。 でも、そんなことを銀子に言えるはずがなかった。 私は銀子の友達ではあるけれど、親友ではない。 いつもの剣道のメンバーには、『そんなに一緒にいるのにどういうこと?』と聞かれる。でも仕方がない。 彼女は、親友を欲しがる性質じゃない。 ────学校という閉鎖された空間で、彼女の存在は眩しすぎた。年のわりに成熟しすぎて、芳しい香りをさせていたのだから、それも無理ないのだけれど。 しかし、その集る人の多いこと多いこと。 彼女はそういうことにうんざりしていた。だって自分の望まぬ人間が凝縮された場所で、求められるのだから。それを払うのが私の役目だろう。 少なくとも私といるところを見て、男が銀子に話しかけることはなかった。 (私の性格きついからな) こんなときに自分の顔をありがたいと思ったことはない。目付きが厳しく、言葉も荒い私のことを、大抵の生徒は怖がっていたからだ。 あと風紀委員もしていたから、規則にも厳しかったし。 “私がいたら銀子は快適なスクールライフを送れる” おそらく銀子は、それを望んでいた。彼女の口からそれを実際に聞いたことはない。だけど私は気づいてしまった。 ───ずっと犬猿の仲だった私に銀子が寄ってくる理由なんて、それしかない。中学三年の時なんてしょっちゅう喧嘩ばかりで、今みたいにろくに話したことはなかった。 なのに、銀子は私を高校のお供に呼んだのだから。 (そーゆうことか) 私は利用されたのだと気づいていた。その報酬に、“友達”としての手解きをしてくれている、ということにも。 でも私はそれで良かった。 もうどう足掻いても銀子の沼から這い上がることができないんだから、私は。一度、足先をつけてみるだけにして落っこちてしまったんだ。きっと。ぬるま湯のような居心地のよい場所に。 だから騙されているフリをしつづけようと思った。もともと一匹狼だった彼女の側にいるためには、それしかなかった。 私が事実を述べて銀子に、 「え~めんどぉ。なになに、今までの分の謝罪がほしいのぉ? そんなめんどいんだったら、他の子探すしー」 と勘違いされたら問題だ。 私は別にこれ以上どうしたいとかはなかった。本当は彼女の唯一無二の親友になりたい──けれどそれを伝えてしまえば、今の素敵な関係は一気に崩壊するだろう。それこそ、その場ですぐ。 銀子は面倒なことには、容赦がないから。 私は今のままでいい。 銀子の気まぐれによって選んだただのクラスメートであっても、私はそれで、いい。選ばれたというだけで最高の奇跡なのだから。 まるでサンタさんが一軒だけ本当にプレゼントを届けに来てくれるとして、その家に当たったかのような奇跡だ。 そこに友愛を求めるだなんて、誰が言えるだろうか。 だから私は今日も銀子に言われた通り、服を脱ぐ。 (本当は、恥ずかしいからブラジャーを脱ぎたくない……) ブラジャーのホックを外して、赤く腫れた乳首を晒した。銀子はそれに指をそえた。 (コンプレックスに触れられるなんて……心臓が止まりそうだ) 彼女はすらりと長い指で先っぽを引っ掻きながら、おっぱいにキスをした。触れるだけの優しいキスをひとつ。 (そこに意味はないんだろうけど、“銀子は私のことを特別な友達だと思っている”からしてもらえてるんじゃないか……とか思ったり…) 私はキスをされた刺激でイってしまった。 身体と心がちぐはぐになっていく。 バラバラに分裂されたような、そんな、不安な気分にどんどんなる。 私は本当に銀子と偽りの親友で良かったのに、身体が『もっと、もっと』と望んでいた。もっと銀子から愛されたい。もっと銀子は、私だけの友達になってほしい。他に友達をつくってほしくない。 ……思春期にある女子の友達を他にとられたくない、ってやつだ。 自分にもそんな浅ましいところがあったなんて、と私は気持ち悪くなる。なんていやらしいんだろう。はしたない……十分愛をもらっていると言うのに。 (これじゃ近いうちに、銀子に飽きられてしまうかもしれない……) 私は、長い秋の夜にそう悩むのだった。 そうしているうちに季節は過ぎ、鴬の鳴く季節になった。